「歴史ある仕事に魅かれて」備前焼 嶋工房 嶋幸博 | CO人日和


2016/09/6

「歴史ある仕事に魅かれて」嶋工房 嶋幸博

 

「歴史ある仕事に魅かれて」嶋工房 嶋幸博

受賞歴 : 日本陶芸展入選 、 日本伝統工芸支部展入選
所属団体: 備前焼陶友会 、 備前焼伝統工芸士会

 

-約50年前、備前焼に魅かれて、博多から岡山備前に移住した嶋幸博さん。

独立をする際に、建てたという工房とご自宅でお話を伺いました。

 

1.桃山時代の大甕に出会って

 

無釉焼き締め、絵付けをしないで土を焼いただけの備前焼に魅かれて、それまで働いていた新日本製鉄をやめました。そして、1967年に備前陶芸センターに入所し、その後、72年に現在の工房・自宅に登り窯を築き、独立したんです。

古備前が好きで、いま大甕は江戸、安土桃山、室町のものを3つ持っているんです。これは、一番古い室町時代のもので、およそ600年は昔のものです。

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いまは田土(ひよせ)という田んぼの土を使うことが多いけど、この時代は山土だけを使ってできたもので、全体として赤茶色ですね。

あと、ここに「上々捻り土」と書いているんだけど、良い土を手捻りでつくった証なんですね。隣の印は、その時代のマークを表しているんです。

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ぼくは、よそから来ていることもあって、備前焼そのものをすごく新鮮に感じて、歴史を感じる焼き物として、その価値にとても興味があるんです。

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- 書棚から取り出してくれた「古備前名鑑」

この本には時代別の窯印が掲載していて、古い時代のものからいろんな調査をしているんです。江戸時代くらい新しいものになると、個人の名前がわかるのも出てくるんです。
伊部駅の裏にある南大窯跡には、今でも古備前のかけらがたくさんあるけど、すごく歴史を感じますね。

 

2.自分が使いたいものは何か

 

いまは、昭和の頃とは違って、生活スタイルや消費の嗜好も大きく変わり、従来の用途・デザインだけで備前焼を売ることは難しい時代です。

そこで、わたしたちは、いま自分が使いたいものは何か、という発想から、備前焼の水槽・アクア備前に至りました。

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制作にとりかかった当初、粘土板で成型をしようと試みましたが、大変な手間がかかるうえに、商品化が難しいため、ロクロ成形でつくるようになりました。

そして、登り窯で1週間以上、焼き締めてできる備前焼は、ひとつひとつ焼き上がりが異なるため、始めから決まったガラス窓をつくることができません。

ですので、焼きあがってから、備前焼の枠に合うよう、ガラス板やアクリル板を切り、片面ずつ仕上げ、最後に水が漏れないかどうか、数日かけて行います。

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こうして、何カ月もかけて完成する作品は、焼き色や形が全部ちがう面白さがあり、できあがったひとつひとつにとても思い入れがあります。

また、普通の備前焼とは違い、窯から出したあと、作業に時間がかかるところが、アクア備前の制作の特徴でもあります。

つくり始めて8年程が経ちますが、実際につくる積み重ねを通じて、新たな技術に気づく面白さがあるので、まだまだ備前焼というものの奥深さ、可能性を感じます。

 

3.仕事と暮らし

(嶋喜美子)
独立をしたときは、本当に何も無いところから始まりましたが、当時は、備前焼の価値が世間一般に認められており、良いものをつくれば売れる時代でした。

40年近く、好きな仕事ができて、3人の子育てをすることができました。今となっては、備前焼に出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

昔から、備前焼を生業にしていた家は、半農半陶といって、自給自足をしていたそうですが、私たちも、田舎の良さを活かし、畑で美味しい自前の野菜を作って楽しんで暮らしています。

 

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いま、嶋工房では、嶋幸博、喜美子、大祐が、アクア備前を始め、それぞれ3人3様の制作をしています。また、個人作家としても、さまざまな展覧会に出展していますので、見に来ていただければ嬉しいです。

備前焼は、登り窯で焼くと、とても素敵な焼き色がある反面、2割くらいは傷ができて売り物になりません。その分、割れずに完成した作品は一生使えるだけの品物になっています。備前焼を購入した際は、一生大切にしてほしいと心から願っています。

 

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(写真・取材・編集)竹田俊亮